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公開日:2020.01.21 最終更新日:2021.12.24

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私的整理ガイドラインとは?ルール、再建計画案の内容、経営陣の退任について解説

目次CONTENTS

この記事では、私的整理に関するガイドラインについて、弁護士がくわしく解説いたします。

私的整理に関するガイドラインとは

「私的整理に関するガイドライン研究会」が、平成13年4月の政府の緊急経済対策を受け、同年6月に発足しました。
この研究会は、私的整理に関し、関係者間の共通認識を醸成し、私的整理を行うに至った場合の関係者間の調整手続き等をガイドラインとして取りまとめることを最終目標としており、その協議の結果取りまとめられたものが「私的整理に関するガイドライン」(以下、「私的整理ガイドライン」といいます。)です。

対象となる私的整理とは

私的整理ガイドラインによる私的整理は、会社更生法や民事再生法などの手続きによらずに、債権者と債務者の合意に基づき、債務について猶予・減免等をすることにより、経営困難な状況にある企業を再建するためのものです。

多数の金融機関等が、主要債権者または対象債権者として関わることを前提とするものであり、私的整理の全部を対象とするものではありません。その一部を対象とする限定的なものです。

具体的には、会社更生法や民事再生法等の手続きによることが本来であるところを、これらの手続きによった場合に事業価値が著しく毀損されて再建に支障が生じるおそれがあり、私的整理によったほうが債権者と債務者双方にとって経済的に合理性がある場合にのみ、私的整理ガイドラインによる私的整理が行われることになります。

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私的整理ガイドラインのルール

法的拘束力はないものの、金融機関等である主要債権者及び対象債権者、企業である債務者、並びにその他の利害関係人によって自発的に尊重され遵守されることが期待されています。

また、主要債権者は、債務者から私的整理ガイドラインによる私的整理を行いたいとの真摯な申し出があったときは、誠実かつ迅速にこれに対応し、主要債権者と債務者は、相互に手続きの円滑で速やかな進行に協力することとされています。

以上のとおり、私的整理ガイドラインは、法的拘束力を持つものではありません。しかし、金融機関等にはこれを遵守することが期待されており、「私的整理に関するガイドライン研究会」には全国銀行協会、全国信用組合中央協会、全国信用金庫協会等の金融界の代表も参加していましたので、実際に遵守されているようです。

私的整理ガイドラインの対象債務者となりうる企業

私的整理ガイドラインは、いかなる企業でも利用できるとされているわけではありません。利用できる企業は、次の要件を満たす企業とされています。

  1. 過剰債務を主因として経営困難な状況に陥っており、自力による再建が困難であること
  2. 事業価値があり(技術・ブランド・商圏・人材などの事業基盤があり、その事業に収益性や将来性があること)、重要な事業部門で営業利益を計上しているなど債権者の支援により再建の可能性があること
  3. 会社更生法や民事再生法などの法的整理を申し立てることにより当該債務者の信用力が低下し、事業価値が著しく毀損されるなど、事業債権に支障が生じるおそれがあること
  4. 私的整理により再建するときは、破産的清算はもとより、会社更生法や民事再生法などの手続きによるよりも多い回収を得られる見込みが確実であるなど、債権者にとっても経済的な合理性が期待できること

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私的整理ガイドラインはどのようにしてスタートする?

「対象債務者となりうる企業」が、主要債権者に対し、このガイドラインによる私的整理を申し出るところから私的整理ガイドラインはスタートします。
この申し出にあたって、債務者は、過去と現在の資産負債と損益の状況、及び経営困難な状況に陥った原因、並びに再建計画案とその内容などを説明するに足りる資料を提出することとされています。

その後、主要債権者は、一時停止(弁済等の債務消滅行為が禁止されたりする)の通知を発送するか否かの判断をすることとなります。検討の結果、一時停止の通知をするのが相当であるとして、対象債権者全員に対し一時停止の通知が発送されれば、その通知を出した段階で正式に私的整理ガイドラインによる私的整理手続きが開始となります。

私的整理ガイドラインの再建計画案の内容

私的整理ガイドラインによると、再建計画案は、次の内容を含むものでなければならないとされています。

(1)事業計画案

事業計画は債務者の自助努力が十分に反映されたものであるとともに、以下の事項を含む内容を記載することを原則とする。

  1.  経営が困難になった原因
  2.  事業再構築計画の具体的内容(経営困難に陥った原因の除去を含む)
  3.  新資本の投入による支援や債務の株式化(デットエクイティスワップ)などを含む自己資本の増強策
  4.  資産・負債・損益の今後の見通し(10年間程度)
  5.  資金調達計画
  6.  債務弁済計画等

(2)実質的に債務超過であるとき

実質的に債務超過であるときは、再建計画成立後に最初に到来する事業年度開始の日から3年以内を目処に実質的な債務超過を解消することを内容とする。

(3)経常利益が赤字であるとき

経常利益が赤字であるときは、再建計画成立後に最初に到来する事業年度開始の日から3年以内を目処に黒字に転換することを内容とする。

(4)債権者の債権放棄を受けるとき ―株主の権利と地位―

対象債権者の債権放棄を受けるときは、支配株主の権利を消滅させることはもとより、減増資により既存株主の割合的地位を減少または消滅させることを原則とする。

(5)債権者の債権放棄を受けるとき ―経営者の退任―

対象債権者の債権放棄を受けるときは、債権放棄を受ける企業の経営者は退任することを原則とする。

(6)債権者間で平等であること

再建計画案における権利関係の調整は、債権者間で平等であることを旨とし、債権者間の負担割合については、衡平性の観点から、個別に検討する。

(7)債権者にとって経済的な合理性が期待できること

破産的清算や会社更生法や民事再生法などの再建手続によるよりも多い回収を得られる見込みが確実であるなど、対象債権者にとって経済的な合理性が期待できることを内容とする。

出典:「私的整理に関するガイドライン」平成13年9月 私的整理に関するガイドライン研究会
https://www.nta.go.jp/law/bunshokaito/hojin/050511/guideline.pdf

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私的整理ガイドラインで債権放棄を受けるときは経営陣は退任しなければならない?

私的整理ガイドラインにおける再建計画として債権放棄を受けるときは、経営者責任を明確にするため、経営陣は原則退任することとされています。もっとも、その趣旨に照らし、例外的に退任が求められないケースもありますので、ケースバイケースの検討が必要です。

 

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※本記事は、公開日時点の法律や情報をもとに執筆しております。