公開日:2020.06.25
CASE
- 労働問題(労働者側)
- 労働問題(企業側)
履歴書に嘘が見つかった場合、辞めさせることはできる?
目次CONTENTS
[ Q ]
採用した従業員の履歴書に嘘があることがわかりました。この従業員に辞めてもらうことはできますか?
[ A ]
多くの会社では、採用審査の際、応募者から履歴書を提出してもらうと思います。
履歴書には、その方の学歴、職歴、賞罰の有無などが書かれているわけですが、ここに嘘があった場合、使用者としては裏切られたような気持ちになり、そのような人とは一緒に働けないと思うということはよくあることだと思います。
辞めさせることができるかはケースバイケース
それでは、そのような場合に、その従業員に辞めてもらうことはできるのでしょうか。
結論としては、ケースバイケースです。経歴詐称があったからといってどんな事案でも辞めさせることができるということはありません。
例えば、使用者は、経歴を偽った応募者に対し、採用の際、「それではうちで働いてくれ」といった雇用契約成立に向けた意思表示をするわけですが、経歴詐称があった場合、この意思表示が「虚偽の履歴書を前提とする勘違いの意思表示であったため錯誤により契約は無効(民法95条)」であるとか、「騙された結果の意思表示であったため詐欺により契約を取り消す(民法96条)」であるといった法律構成のもとで辞めさせるということが考えられるところですが、いずれもそれなりに要件は厳格です。
また、懲戒解雇とするという法律構成も考えられるところですが、裁判例上、懲戒処分の対象となる経歴詐称については、「使用者による能力や人物評価を妨げ継続的な労働契約関係における信頼関係を損なうような重要な経歴の詐称に限られる」と一定の限定がかけられており、無制限に懲戒処分ができるということにはなっていません。
以上を念頭に置いて、万一に備えた対策をとるとすると、例えば、「会社にとって重要な経歴については、入社の際、嘘がないことの念書を取り付けておく」といったことが考えられるでしょう。
さいごに
当事務所では、就業規則の作成など、労使間の課題についてもご相談をお受けしておりますので、お気軽にお問い合わせください。