公開日:2022.04.11
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カスハラとは?|事例と対応について弁護士が解説
【本記事の監修】 弁護士法人桑原法律事務所 弁護士 桑原貴洋 (代表/福岡オフィス所長)
- 保有資格: 弁護士・MBA(経営学修士)・税理士・家族信託専門士
- 略歴: 1998年弁護士登録。福岡県弁護士会所属。
日本弁護士連合会 理事、九州弁護士会連合会 理事、佐賀県弁護士会 会長などを歴任。
目次CONTENTS
顧客の度を超す要求や言動などを「カスタマー・ハラスメント(カスハラ)」と呼びます。カスハラはコロナ禍で増えているとされ、困っている事業者も多いでしょう。どう対応すればよいでしょうか。福岡・佐賀で中小企業の顧問を100社以上、務める弁護士法人 桑原法律事務所が解説します。
カスハラとは:悪質・不当なクレーム
カスタマー・ハラスメント(カスハラ)は顧客(または潜在的な顧客)からの過剰・不当なクレームをいいます。
厚生労働省の「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」によると、「明確な定義はできない」としつつ、「カスハラと考えられている」内容を下記のように記しています。
顧客などからのクレーム・言動のうち、当該クレーム・言動の内容の妥当性に照らして、当該要求を実現するための手段・態様が社会通念上不相当なものであって、当該手段・態様により、労働者の就業環境が害されるもの |
カスハラは2つに大別されます。
- 要求そのものが不当
- 要求が妥当か不当かにかかわらず、実現のための手段が悪質
流通や繊維などの労働組合「UAゼンセン」は2020年10月、カスハラの実態調査を報告しました。以下の事例でも紹介しています。
要求そのものが不当なカスハラ例
正当な理由のない過度な要求として、たとえば下記のような事例があります。
- 旅館の宿泊客が歯ブラシ10本を要求された
- 介護サービス以外の対応を求められ、「あの人はやったのにやらないのか?」と理不尽に怒られた(UAゼンリン)
- ドラッグストアでマスクの在庫切れに怒り「どうにかしてマスク買ってきて並べろよ」と言われた(同)
要求を実現する手段が悪質なカスハラ例
要求が妥当かどうかにかかわらず、手段が不相当なカスハラとして下記が挙げられます。
- 暴力:殴る、ける、物を投げつける、机をたたくなど。「レジの接客態度が悪いと呼ばれて、到着するやいなや、胸ぐらをつかまれ15mくらい引きずられた」(UAゼンリン)
- 暴言:ホームセンターでは扱いがない商品と知りながら、あえて聞いて来て即答できないと怒鳴りつけ、「お前はバカだ!」と何度も言われた(同)
- 土下座の要求:物品要求をチラつかせ対応できないと伝えると「土下座して謝らないと許さない」といわれ謝罪した(同)
- 執拗な言動:1月の寒い中、半袖の制服のまま駐車場で、二時間クレーム対応で拘束された(同)
- 性的な言動:身体にさわる、つきまとい
カスハラの判断基準、整備して共有を
顧客が殴る・蹴るといった暴力を加えた場合は、明らかなカスハラであり犯罪です。
ただ「クレーム内容が妥当かどうか」「どこまで自分で対応すべきか」「どこで上司に引き継ぐべきか」といった判断は、現場で対応している従業員にとっては難しいケースも多いでしょう。どこで揚げ足を取られるかも分かりません。
相手の要求が過大なのか、そうでないかの判断は難しいものです。
顧客は「妥当だ」「正当な要求だ」と信じて要求しています。ていねいに話しても納得してもらえず、平行線となる可能性もあります。
「どこからハラスメントか」は人によっても感じ方は異なります。業界や企業によってもそれぞれです。
厚労省は「各社で判断基準をつくり、方針を共有する」のが重要としています。判断基準がしっかり整備されていると、現場の助けになるでしょう。
例えば、下記のような対応が考えられます。
- 商品やサービスに対する「正当なクレーム」と「悪質なクレーム」の線引きを示す
- ハラスメントの具体例をできるだけ細かく示す
- 具体例を従業員や客・利用者と共有する
カスハラ対策は十分ですか?
判断基準ができたら、カスハラ対策に漏れがないかチェックしましょう。厚労省による「企業の対策チェックシート」の主な項目を紹介します。
- 組織のトップがカスハラ対策について方針を示しているか
- カスハラの基準を決め、従業員に周知しているか
- 監視カメラはあるか。警備担当者はいるか
- 対応マニュアルはあるか
- 警察など連絡先を周知しているか
カスハラが起きたら:複数で応対、記録を残す
三菱総合研究所による介護事業者向けの「介護現場におけるハラスメント対策マニュアル」では、下記のような対応チャートが載っています。
- 被害にあったスタッフは責任者らに報告。複数(2人)で対応する
- 被害者、加害者、第3者に聞き取りし、事実関係を確かめる。記録を残す
- 被害があると判断したら、双方に対して措置をする。加害者には注意勧告や担当の変更、被害スタッフには状況の説明とメンタルのケア
- 事業所として共有。場合によっては行政に報告、再発防止に取り組む
ネット中傷の解決事例:Twitterでの中傷、刑事告訴に
当事務所が対応したカスハラ問題の一例を紹介します。
お店を営むAさんは、客とのトラブルをきっかけにSNS上で炎上しました。不特定多数の人から「あいつは窃盗や脅迫をしている」といったデマが投稿されるようになりました。
なかでもAさんの実名を出してひどく中傷するアカウントがありました。アカウントの使用者は「元の客であるBさん」とAさんは言いました。断定する根拠を尋ねると、Aさんは「Bさんが直接、アカウント名を教えてきた」「投稿にもBさんの実名が出ている」「Bさんの顔写真も投稿されている」とのことでした。 当事務所では、「プロバイダに情報開示請求などしなくても、アカウント使用者がほぼ特定されている」とした告訴状を作成して、警察に提出しました。 この結果、Bさんは信用毀損罪で起訴され、刑罰を受けました。 |
弁護士と顧問契約をしていただくと、電話やメールでも法的なアドバイスをさせていただきます。「執拗なクレームに困っている」といったお悩みがあれば、ぜひ当事務所にご相談ください。
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