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案件別コラム

公開日:2020.09.04

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  • 労働問題(労働者側)
  • 労働問題(企業側)

辞職届は撤回できるか

目次CONTENTS

[ Q ]

先日、従業員Aが、突如、社長の私に辞職届を提出し、「辞めさせてもらいます。」と言ってきました。Aは問題行動の多い社員でしたので、私はAに翻意を促したりせず、「ひとまず受理する。」と言い、そのまま辞職届を受理しました。
すると、次の日、Aが「昨日のことは無かったことにしてほしい。気の迷いだった。辞職届を返してほしい。」と言ってきました。

私としては、このまま辞職の方向で進めていきたいと思っています。Aの言い分は法的には通じるものなのでしょうか?

[ A ]

結論としては、Aの言い分は法的には通じないとなるのではないかと思います。
以下で、詳しく解説いたします。

【1】辞職願の意味と効果

まず、辞職願の意味と効果には、2通りの考え方があります。

(1)辞職の申出

辞職の申出の場合は、労働者の一方的意思表示による労働契約の解約の申出であり、労働者の一方的な意思表示により法的効果が発生するため、相手方に到達して以降は撤回ができない

(2)労働契約の合意解約の申込み

労働契約を任意に解約してほしいという労働者側からの申出であるため、相手方に到達して以降も、使用者が承諾するまでは撤回できる

【2】「辞職の申し出」か「労働契約の合意解約の申込み」か

次に、従業員Aの行動は、① 辞職の申出、② 労働契約の合意解約の申込みのどちらかに区別する必要があります。

ある裁判例では、辞職の意思表示が有する効果の重大性から、辞職の意思表示の認定は慎重に行うべきとし、その上で、辞職の意思表示とは、使用者の態度如何にかかわらず確定的に雇用契約を終了させる旨の意思が客観的に明らかな意思表示としました(大阪地判平成10年7月17日)

【3】従業員Aの行動は「辞職の申出」と解される可能性が高い

本件の場合は、ケンカの延長線上で口が滑って辞職を申し出たというものではなく、前もって辞職届を準備し、しっかりと考えた上で辞職を申し出ているように思いますので、Aの辞職届の提出は、辞職の申出と解される可能性が高いかと思います。
そして、これが社長の下に到達している以上、これを撤回することはできないとなる可能性が高いでしょう。

【4】結論

結論としては、Aの言い分は法的には通じないとなるのではないかと思います。