公開日:2021.11.05 最終更新日:2022.05.02
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定年後の再雇用で、未消化の年休(有給休暇)を引き継ぐことはできる?
【本記事の監修】 弁護士法人桑原法律事務所 弁護士 桑原貴洋 (代表/福岡オフィス所長)
- 保有資格: 弁護士・MBA(経営学修士)・税理士・家族信託専門士
- 略歴: 1998年弁護士登録。福岡県弁護士会所属。
日本弁護士連合会 理事、九州弁護士会連合会 理事、佐賀県弁護士会 会長などを歴任。
目次CONTENTS
定年後の再雇用に際し、未消化の年休(有給休暇)はどう扱われるのでしょうか?
定年前と再雇用後で勤務の継続性が認められた場合は、未消化の年休も引き継がれることとなります。以下で、弁護士がくわしく解説いたします。
高年齢者雇用安定法の「高年齢者雇用確保措置」
高年齢者雇用安定法は、65歳未満の定年を定めている事業主に対し、「高年齢者雇用確保措置」として
- 定年の引上げ
- 継続雇用制度の導入
- 定年の廃止
のいずれかの措置をとるよう義務づけています(高年齢者雇用安定法9条)。
継続雇用制度とは、「現に雇用している高年齢者が希望するときは、当該高年齢者をその定年後も引き続いて雇用する制度」のことをいい(高年齢者雇用安定法9条1項2号)、多くの事業主が採用しています。
もっとも、高年齢者雇用安定法は、継続雇用後の労働条件を規律するものではなく、必ずしも定年前の労働条件を維持する必要はないですし、極端に苛酷な条件を提示する等の例外を除き、事業主の合理的な裁量の範囲内で労働条件を提示することが可能です。
定年前と再雇用後で勤務の継続性が認められた場合は、未消化の年休も引き継がれる
結論としては、定年前と再雇用後とで、勤務の継続性が認められた場合は、未消化の年休も引き継がれることとなります。
この点、実務においては「定年退職日と再雇用日との間に相当期間が存し、労働関係が断絶していると認められる場合は、勤務の継続性を否定する」との判断がなされますが、「相当期間」がどの程度の期間を指すのかは明確ではないですし、都度の事例判断になると思われます。
上記勤務の継続性が否定された場合は、未消化の年休は再雇用後は行使できないことになりますし、勤務の継続性が認められた場合は、定年前の未消化の年休を再雇用後も取得できることになります。
参考文献:[改訂版]企業のための労働契約の法律相談/青林書院/[編]下井隆史 松下守男 渡邊徹 木村一成
なお、厚生労働省東京労働局HPにも関連する記載がありましたので、以下に参考として転記いたします。
『年次有給休暇を付与することが必要となるための要件のひとつとして、労基法第39条では「6ヶ月以上継続勤務」することを定めとしていますが、この「継続勤務」とは、労働契約が存続している期間の意であり、いわゆる在籍期間のことであると解されています。労働契約が存続しているか否かの判断は、実質的に判断されるべき性格のものであり、形式上労働関係が終了し、別の契約が成立している場合であっても、前後の契約を通じて、実質的に労働関係が継続していると認められる限りは、労基法第39条にいう継続勤務と判断されます。定年退職による退職者を引き続き委嘱等として再採用している場合(退職手当規定に基づき、所定の退職手当を支給した場合を含む。)は、継続勤務となります。』
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