公開日:2022.05.12
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自己破産したら株・FX・生命保険はどうなる? | 弁護士が解説
【本記事の監修】 弁護士法人桑原法律事務所 弁護士 桑原貴洋 (代表/福岡オフィス所長)
- 保有資格: 弁護士・MBA(経営学修士)・税理士・家族信託専門士
- 略歴: 1998年弁護士登録。福岡県弁護士会所属。
日本弁護士連合会 理事、九州弁護士会連合会 理事、佐賀県弁護士会 会長などを歴任。
目次CONTENTS
借金を減らす法的な手続きの一つである自己破産をすると、所有している株やFX(外国為替証拠金取引)、生命保険はどうなるのでしょうか。債務整理に精通する福岡・佐賀の弁護士法人 桑原法律事務所の弁護士が解説します。
自己破産すると財産はすべて没収されますか?
すべての財産が対象ではありません。破産法は一定の限度で、処分しなくていい財産を認めています。
そもそも自己破産とは「借金が払えない」として、裁判所に破産を申し立てることをいいます。借金を払う義務を免除(免責)する手続きである「債務整理」の一つです。
免責する決定が出れば事実上、借金を支払わなくてよくなります。免責されない債務は下記などです。
- 税金・罰金
- 健康保険料
- 養育費など
破産すれば1億、2億といった借金でも、免責されれば支払う義務からは解放されます。そのかわり、財産は差し押さえ(没収)の対象となります。下記は没収の対象となる財産の一例です。
- 価値のある不動産(土地・マイホームなど)
- 価値のある動産(車・貴金属・骨董品など)
- 99万円を超える現金
- 20万円を超える預貯金や有価証券(株券、債権、投資信託)など
- 生命保険の解約返戻金など
自己破産しても残せる財産は何でしょうか?
「預金もゼロ」「車もない」となると、借金はゼロになっても生活が立て直せない可能性があります。そこで「破産者の経済的再生」との目的に照らして、生活に不可欠なものは処分の対象外にできる制度(自由財産拡張制度)があります。
裁判所が「その財産が生活に不可欠」と判断してくれるかどうかがポイントになります。
各裁判所の運用によりますが、一般的に99万円を下回る財産については、処分しないことを認めてくれます。
この観点から具体的にみていきましょう。
Q. 自己破産をすると株はどうなりますか?
A. 株などの有価証券は一定の金額以上になると、お金に換えたうえで債権者への配当に回ります。ただし有価証券の価値は、評価が難しいケースがあります。非公開会社の株式などが例として挙げられます。
持っている株式が上場している会社の株式であれば、株価が公表されているため、価格は比較的容易に判断できます。
非公開会社の株式は株価が公表されていませんので、そもそも価格がいくらなのかという点が問題になりえます。
非公開会社の株式の評価については様々な方法があります。
どの評価方法を採用するかはケースバイケースですので、破産管財人や裁判所と協議しながら慎重に検討していく必要があります。
非公開会社の株式を換価する場合は、会社の許可が必要
非公開会社の株式は、換価(=譲渡)にあたって会社の許可が必要です。
たとえば、同族経営の会社の株式を同族以外の第三者に譲渡しようとする場合などは、会社の許可が得られず、処分ができない可能性もあります。
このような場合、会社の経営者や既存株主への譲渡が想定されます。
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自己破産するとFXはどうなりますか?
FXとは証拠金(保証金)を業者に預け、円とドルといった2つの為替相場を予測して売買する金融商品です。
FXで得た現金も財産ですので、一定の金額以上であれば没収の対象になります。
自己破産すると生命保険は解約しないといけませんか?
A. 生命保険の解約返戻金が一定の金額以上になると、債権者の配当に回ります。
生命保険も破産する人が契約者であれば、財産の一つです。「お金に換えましょう」という基本的な考え方は他の財産と同じです。
生命保険を解約すると返ってくるお金は原則、債権者への配当に回ります。
「一定の金額」は各裁判所の基準によります。
福岡地方裁判所では「20万円以下」であれば手元に残す運用です。
お金を差し出して生命保険を残すという方法も
解約返戻金が一定の金額以上であっても残したいという場合は、生命保険の替わりにお金を差し出し、保険契約を残すという方法もありえるでしょう。
自己破産をした後に得た株はどうなりますか?
A. 手元に残ります。
裁判所が「破産手続開始決定」をした後に得た収入や財産は「新得財産《しんとくざいさん》」と呼ばれ、破産手続き中でも自由に処分できます。
破産手続きにおいて、お金に換える(換価)の対象となるのは、「破産財団」(換価の対象となる財産)と呼ばれる財産です。
「破産財団」になるのは、破産する人が破産手続開始の時点で持っている財産です。
そのため「破産手続開始決定」後に得た株は、破産財団ではありませんので換価の対象とはなりません。
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※本記事は、公開日時点の法律や情報をもとに執筆しております。
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