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法律コラム

公開日:2022.06.29

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  • 債務整理

奨学金の保証人 | 過払い返還できる? | 返済できないときは | 弁護士が解説

目次CONTENTS

奨学金の保証人などになった2人が、過払い金などの返還を日本学生支援機構に求めた訴訟で、札幌高裁は2022年5月、機構に対し、計約220万円の支払いを命じました。機構は上告せず、原告と同じ立場にある保証人約2000人に対し、過払い分およそ10億円を返還すると明らかにしました。奨学金の過払いについて、福岡・佐賀の弁護士法人 桑原法律事務所の弁護士が解説します。

奨学金の返済 過払いとは 弁護士が解説

訴訟の争点「分別の利益」とは

報道によると裁判では、共同保証について定めた民法上の「分別(ぶんべつ)の利益」をめぐって争われました。訴えを起こしたのは、教え子の保証人だった北海道の元教諭と、おいの保証人だった男性(故人)の妻です。

機構は、奨学金を借りた本人と連帯保証人が返済できない場合、保証人に全額の返済を請求していました。

2021年5月の一審・札幌地裁判決によると、元教諭はおよそ94万円を請求され、約65万円を支払いました。また、女性の夫は生前、請求された約242万円を全額支払いました。

原告らは保証人の数によって返済額が減る「分別の利益」を主張し、保証人の返済義務は半額だけとして、義務を超える支払いについて返還を求めました。

被告である機構は、保証人は自ら「分別の利益」を主張しなければ適用も受けられないと反論しましたが、札幌高裁は「保証人による分別の利益の主張は必要ない」と退けました。そして、半額を超える分の返済は無効として、利子を含む計約200万円の返還を機構に命じました。

分別の利益とは

「分別の利益」とは保証人が複数いる場合、各自は人数で頭割りした分しか返済する義務がないとするルールです。

たとえば返済すべきお金が200万円で、連帯保証人が1人、保証人が1人いるとします。

本人も連帯保証人も返せなくなった場合、保証人が返す必要があるのは200万円ではなく、半額の100万円になります。

「連帯保証人」と「保証人」の違いとは

日本学生支援機構から奨学金を借りるには、原則として、下記のどちらかの「保証」が必要です。

  • 機関保証
    一定の保証料を支払い、保証機関が連帯保証します。人的な連帯保証人や保証人は不要です。借りた本人が返済を延滞すると、保証機関がいったん代わりに返済し、そのあと保証機関が本人に返済を請求します。
  • 人的保証
    機構が求める条件にあう連帯保証人1人(原則として父母)と、保証人1人(原則として4親等以内の親族。おじやおば、きょうだいなど。本人や連帯保証人と別生計の人)が保証します。本人が返済しないときは、連帯保証人・保証人が返済する義務があります。

連帯保証人の責任は保証人よりも重い

連帯保証人には、借りた本人と同じ責任があります。債権者(貸した側)は、債務者本人にではなく、いきなり連帯保証人に請求もできるとされています。

また、複数の連帯保証人がいても「分別の利益」はなく、全員が全額を返済する責任を負います。

一方、保証人には、債権者(貸した側)が支払いを求めてきた場合、借金した本人や連帯保証人(主債務者)が破産や行方不明でない限り、「まずはそちらに請求を」と求める権利が認められています。

過払い金が返金される「保証人」とは

札幌高裁の判決を受けて、日本学生支援機構は「分別の利益」にもとづき、本人が返していない額の半額を保証人に請求するルールに改めました。

機構はこれまで過払いをした保証人に連絡し、自己負担分を超えて弁済した分の返金の手続きを進めるとしています。

過去5年以内に返済が終わった保証人現在返済中の保証人のうち、過払い金返還の対象者には、機構より返還額が通知されます。機構に返金を希望すれば、「2022年8月末をめどに、指定口座に入金する予定」としています。

なお、過去5年以上前に返済を終えた保証人には、機構から通知は届きませんが、返金対象であることを確認するための資料を保証人自身がそろえて申し出れば、過払い金が戻ってくる可能性があります。

必要な資料は、以下などです。

  • 返還誓約書(借用証書)
  • 督促状(奨学生番号、保証人としての氏名、返還未済額、支払期日などの記載)
  • 払込金受領証(奨学生番号、本人と保証人氏名、支払額、支払年月日などの記載)

詳しくはこちら(返還超過額の返金に関するQ&A|日本学生支援機構)

返還される保証人とは

Q.連帯保証人は過払い金返還の対象になりませんか?

A. 機構に返済すべき額が半分になるのは、「分別の利益」が適用される保証人だけです。保証人が自己負担額を超えて返済していた場合に、払いすぎた分が返金されます。

連帯保証人は、返済されていない全額について支払う義務がありますので、過払い金返還の対象とはなりません。

Q.コロナで失業し、奨学金の返済がきついです。どうしたらよいでしょうか。

A. 災害、傷病、経済困難、失業などの事情が生じた場合は、月々の返済を先延ばしにする「返還期限猶予」や月々の返済額を減らす「減額返還」を申請できます。

いずれの場合も、返済総額(利息を含む)は変わりません。

奨学金が返せなくなったら

奨学金の返還期限猶予・減額返還の申請

日本学生支援機構に、所定の書類、マイナンバーを添えて届け出ます。いずれも1年ごとに願い出る必要があります。延滞してしまう前に願い出ましょう。

返還期限猶予(月々の返済の先延ばし)ができるのは、下記に当てはまる人です。最長10年まで延長できます。

  • 給与所得の人:年間の収入金額が300万円以下
  • 給与所得以外の所得のある人:年間の所得金額 200万円以下

減額返還(月々の返済額を減らす)ができるのは、下記に当てはまる人です。月々の返済額を 1/2か1/3に減らすことができます。減額した分、返済期間は長くなります(最長15年)。

  • 給与所得の人:年間の収入金額が325万円以下
  • 給与所得以外に所得のある人:年間の所得金額が225万円以下

いずれの制度も、被扶養者がいたり親へ援助していたりする場合などは、一定の額を控除して収入基準以下になれば申請できます。

詳しくはこちら

Q.生活保護を受けています。奨学金の返済が滞っていますが、免除になりませんか?

A. 奨学金の返済が免除になるのは、下記のケースなどです。

  • 死亡
  • 障害がある状態になり、働けなくなった
  • 自己破産

生活保護を受けている人ですでに延滞状態にある場合は、支払いを先延ばしできる「延滞措置猶予」を申請できます。

延滞措置猶予について 詳しくはこちら

Q.自己破産すれば奨学金は返さなくていいでしょうか。

A. 返さなくてよくなります。

自己破産は「借金が払えない」として、裁判所に対し破産を申し立てることをいいます。その後、免責決定が出れば、事実上、借金を支払わなくてよくなります。

自己破産によって借金を免責されるには、「支払不能」と認められ、免責不許可事由がないことが求められます(ただし、免責不許可事由があっても免責が認められるケースはあります。)。

自己破産は有効な借金問題の解決方法ですが、裁判所への申し立てが必要です。手続きは服複雑なため、弁護士に相談したほうがよいでしょう。

自己破産について 詳しくはこちら
免責不許可事由について 詳しくはこちら

奨学金以外にも借金があり、返済が難しいときは

奨学金のほかにも借金があり、返済が難しい状況のときは、自己破産や個人再生などの債務整理手続きを選択された方がよい場合もあります。

どの債務整理方法を選ぶべきかは、ご自身の収入や資産の状況などによりケースバイケースですので、まずは専門家である弁護士にご相談いただくことをおすすめいたします。

当事務所では債務整理のご相談について、ご来所・電話・Webによる無料相談(初回30分)を実施しております。どうぞお気軽にお問い合わせください。

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