公開日:2022.06.10 最終更新日:2021.12.21
- 法律コラム
- 債務整理
- 自己破産
オンラインカジノ・パチンコ・ネットゲームの借金 | ギャンブルでも自己破産できる?
【本記事の監修】 福岡の弁護士 弁護士法人桑原法律事務所 弁護士 桑原貴洋 (代表/福岡オフィス所長)
- 保有資格: 弁護士・MBA(経営学修士)・税理士・家族信託専門士
- 略歴: 1998年弁護士登録。福岡県弁護士会所属。
日本弁護士連合会 理事、九州弁護士会連合会 理事、佐賀県弁護士会 会長などを歴任。
目次CONTENTS
法律には「浪費や賭博(とばく)では借金を免除できない」との定めがあり、「ギャンブルでつくった借金では自己破産できない」とされています。しかし、実務上、裁判所が免責を認める例も多いのです。債務整理に精通する福岡・佐賀の弁護士法人 桑原法律事務所の弁護士が解説します。
Q.そもそも自己破産とは何でしょうか?
A. 自己破産とは借金を整理する手続きである「債務整理」の一つです。借金を抱えた人が「もう払えない」として、裁判所に破産を申し立てることをいいます。
裁判所が手続きをへて「支払不能の状態である」と判断し、「免責決定」が出れば事実上、借金を支払わなくてよくなります。たとえ、1億、2億といった借金でも、免責されればその支払義務からは解放されます。
「支払不能の状態である」と判断するための明確な基準はありませんが、一般的には下記などが目安になっています。
- 年収の1.5倍以上の借金がある
- または3~5年のうちに完済できない状態である
税金や健康保険料などは払わなくてはなりませんが、破産手続きは借金問題を根本的に解決する方法といえます。
ただし自己破産をすると原則、財産はお金に換えられてしまいますので、自宅をお持ちの方などは注意が必要です。
Q.オンラインカジノの借金が返せません。自己破産できますか?
A. ギャンブルで借金が増えたから破産できない、ということはありません。
ポイントは「免責されるかどうか」です。ギャンブルが原因の借金で破産を申し立てた場合、「免責不許可事由」に該当し、免責されない可能性があります。
しかし、免責の許可については最終的に裁判所が判断しますので、ギャンブルが原因だからといって必ずしも免責されない(自己破産できない)というわけではありません。
自己破産の免責とは
自己破産の申し立ては通常、同時に借金を免除してもらう「免責許可」も申し立てます。
裁判所が免責を許可した場合、「破産債権」についての責任は免れる(返さなくてよい)とされています。破産債権とは、破産手続きが始まる前につくった借金など(ただし税金などは除く)のことです。
免責不許可事由に該当すると免責されないことも
免責許可を申し立てると法律上、裁判所は基本的には免責決定をします。
しかし、いくつかの例外に該当すると、免責されないことがあります。この例外を「免責不許可事由(めんせきふきょかじゆう)」といいます。
免責不許可事由とは
破産法が免責不許可事由になるとしているのは下記などです。
- 詐害目的での財産の不利益処分:債権者に不利益を与える意図で預金など処分
- 不当な債務負担・換金行為:ヤミ金融からの借金など
- 不当な偏波(へんぱ)行為:特定の債権者だけに借金を返す行為など
- 浪費又は射幸行為:ムダづかい、ギャンブルなど
- 詐術による信用取引:財産があるとウソをつき、ローン契約で車を購入するなど
- 帳簿隠滅などの行為:帳簿や資料を隠す行為など
- 虚偽の債権者名簿の提出:特定の債権者を外すなどした債権者名簿を裁判所に提出
- 調査協力義務違反:裁判所の調査に協力しないなど
- 管財業務妨害行為:破産管財人らの職務執行を不正な手段で妨害するなど
- 免責後7年以内の免責申し立てなど:過去7年以内に自己破産した人
- 破産手続・免責手続上の義務違反行為:事情を説明するといった義務を果たさない
(破産法252条1項1号~11号)
ギャンブルは免責不許可事由にあたる?
ギャンブルは「4.浪費又は射幸行為」にあたる可能性があります。
それでは、「ギャンブルが原因の借金は免責が認められないのか」と思われるかもしれませんが、そうではありません。免責不許可事由があっても「相当性」があれば、免責が可能です。
裁判所が破産手続開始の決定に至った経緯など、一切の事情を考慮して「免責を許可することが相当である」と認めれば、免責の決定ができます。破産法では「裁量免責」と呼ばれ、実務上は多く認められています。
- 原則:免責が認められる
- 例外:免責不許可事由に該当するような場合は免責不許可
- ただし:免責不許可事由があっても、「裁量免責」となれば免責が認められる。
免責不許可となる割合は1%未満
自己破産の申し立てのうち、「免責不許可」となる割合は1%にも満たないようです。免責不許可事由がある事案も一定数、申し立てられているはずですので、相当数が「裁量免責」となっていると思われます。
法的な借金整理の方法のひとつである「個人再生」の場合は、免責不許可事由があるという事情は自己破産ほど大きな意味を持ちません。免責不許可事由があることを理由に再生手続きを選ぶ人もいます。
自己破産?個人再生?
自分に合う債務整理の方法を
シミュレーションする
オンラインカジノの借金500万円が免責された事例
当事務所での解決事例をご紹介します。
Aさんはオンラインカジノで500万円の借金をつくってしまいました。お金に換えられる財産も特にありませんでした。自分がギャンブル依存症だと自覚しており、家族の支えもあって、通院して治療も受けていました。
弁護士は裁判所に破産を申し立て、債権者に対して手続きの状況を報告し、意見を聴く「債権者集会」に同席しました。また、「Aさんはギャンブル依存症の治療を行っており、深く反省し、今後はギャンブルをせず借金をしない」ということを強調して主張しました。
結果として、無事に破産の免責が認められ、借金を事実上ゼロにできました。
パチンコなどでつくった450万円以上の借金が事実上ゼロになった事例
Bさんは主に、ギャンブル(パチンコ)、遠距離の彼女と会うための交際費、投資のために、450万円以上もの借金をしていました。しかし、借金の返済が難しくなり、弁護士に依頼され、破産を申し立てました。
ギャンブルでつくった借金だったため「免責不許可事由」にあたる可能性がありました。このため破産申し立て後、Bさんは反省文を書き、裁判所に提出しました。
「免責不許可事由」が疑われる場合は、種々の調査が必要になる管財事案になることもありますが、本事案では破産手続き開始決定後、ただちに破産手続きが廃止されて終了する「同時廃止」手続きとなりました。管財事案となれば必要だった約20万円の予納金(裁判所に納めるお金)も支払わなくてよくなりました。
債権者による意見申述期間を経て、裁判官によって免責が認められ、借金が事実上ゼロになりました。
ネットゲーム(ネトゲ、オンラインゲーム)での500万円以上の借金が裁量免責となった事例
Cさんはネットゲーム(ネトゲ、オンラインゲーム)にはまり、借金をしてまで課金を続けてしまいました。負債がふくらんで自転車操業に陥り、最終的には返済不能となったため、自己破産を決意されました。
弁護士は破産申し立てのサポートと、ネットゲームを断ち切るためのアドバイスを行いました。どのようにすればネットゲームを辞めることができるのか計画を立て、実施してもらい、進捗状況を定期的に見守りました。
Cさんは、ネットゲームを実際にやめることができました。
自己破産の手続きとしては、破産管財人による調査などの手続きがある管財事件となりました。この結果「免責不許可事由あり」となりましたが、ネットゲームをやめたことが評価され、「裁量免責」となりました。Cさんは事実上、借金がゼロになりました。
ギャンブルが原因の借金でお悩みの方は、当事務所の弁護士にお気軽にご相談ください。借金のご相談は、初回の相談料は無料(30分)です。お電話でもご相談いただけます。
※本記事は、公開日時点の法律や情報をもとに執筆しております。
債務整理診断シミュレーター
あなたの債務状況から、最適な債務整理の方法をご提案します。いただいた情報は無料診断・相談以外の用途には一切利用いたしません。
最後まで進んでいただくとその場で結果が表示されますので、安心してご利用ください。