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公開日:2022.10.07

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時間外労働と割増賃金|計算方法についても解説

目次CONTENTS

職場で決められた出勤時刻よりも早くから働いたり、職場で決められた退勤時刻を過ぎても働いたりすることはありませんか?今回は、時間外労働について弁護士が解説いたします。

時間外労働とは

時間外労働とは

時間外労働とは、法定労働時間を超える労働をいいます。法定労働時間は、1日8時間、1週40時間とされています(労働基準法32条)。

法定労働時間とは別の概念として「所定労働時間」というものがあります。所定労働時間とは、事業場ごとに決められる労働時間です。例えば、1日7時間、1週35時間などと職場の「就業規則」に定められていると思います。

ここで、1日7時間と所定労働時間が定められている会社において、ある日8時間働いたとします。この場合、時間外労働をしたといえるでしょうか?

前述のとおり、時間外労働とは「法定労働時間を超える労働」をいいますので、たとえ会社で決められた1日の労働時間(上の例では7時間)を超えて働いたとしても、時間外労働をしたことにはなりません。

「いつもより多く働いて残業したのに…」と思われるかもしれません。しかし、労働基準法上は、時間外労働をしたことにはならないのです(もっとも、いつもより多く働いた分の給料をもらう権利は発生します)。

ただし上記のように、法定労働時間内ではあるけれど、所定労働時間を超えて働くことを「法内残業」と呼ぶことがあります。

時間外労働をした場合の法的効果とは

時間外労働をした場合の法的効果とは

雇用主(使用者)が従業員(被用者)に時間外労働をさせた場合、雇用主は法的にどのような責任を負うでしょうか。従業員が時間外労働をした場合の法的効果について解説します。

適法に時間外労働をさせるための要件

雇用主としては、適法に従業員に時間外労働をさせたい場合、以下を満たす場合に初めて、適法に従業員に時間外労働をさせることができます。

  1. 時間外労働・休日労働に関する協定(36協定・さぶろくきょうてい)を締結
  2. 上記1を事業場を管轄する労働基準監督署長に届け出
  3. 就業規則等に時間外労働をさせることができる旨の規定を設ける
  4. 上記3の範囲内で時間外労働を命じる

なお、災害等により臨時の必要がある場合(労働基準法33条)も、行政官庁の許可を受けて時間外労働をさせることができますが、今回は割愛します。

上記1または2なくして時間外労働させた場合

上記1(36協定の締結)または2(所轄労働基準監督署長に届け出)のいずれかがないまま従業員に時間外労働をさせた場合、雇用主は6か月以下の懲役または30万円以下の罰金に処される可能性があります(労働基準法119条、32条)。

また、雇用主は、上記の罰則とは別に、時間外労働をさせた従業員に対して割増賃金を支払わなければなりません

上記1~4を備えた上で時間外労働をさせた場合

他方、上記1~4を備えた場合であっても、雇用主は、時間外労働をさせた従業員に対して割増賃金を支払わなければなりません。

すなわち、36協定は、雇用主に対する罰則を免除する効力(免罰的効力)があるにすぎません

結局、36協定の有無にかかわらず、雇用主としては、従業員に時間外労働をさせた場合、当該従業員に割増賃金を支払わなければなりません

割増賃金とは

割増賃金とは

時間外労働をした場合に発生する「割増賃金」とは、以下のいずれかの場合において、雇主(使用者)が従業員(被用者)に、通常の賃金に別途加算して支払われるべき賃金をいいます。

使用者は1週間に1日または4週間に4回の休日を与えなければならず(労働基準法35条)、これを「法定休日」といいます。

  • 法定の基準を超えて時間外労働・休日労働をさせた場合
  • または、午後10時から午前5時までの時間帯における労働(深夜労働)をさせた場合

割増賃金の額は、通常の賃金額に25%以上の割増率を乗じた額となります。

割増率は次のとおりです(割増賃金令)。

①時間外労働 :25%以上
②休日労働  :35%以上
③深夜労働  :25%以上

さらに、上記①~③が組み合わさった場合は、次のとおりとなります(労働基準法施行規則20条)。

①時間外労働 + ③深夜労働  :50%以上
②休日労働  + ③深夜労働  :60%以上
②休日労働  + ①時間外労働 :35%以上

お気づきのように、①+③、②+③は、単純に%を加算した割増率となるのに対し、②休日労働で時間外労働をした場合(②+①)は、割増率は加算されません。

このほか、1か月60時間を超える時間外労働については、割増率が50%以上となります。

割増賃金の計算方法

割増賃金の計算方法

もう少し具体的に、時間外労働をした場合の労働基準法上の割増賃金の計算方法についてお話ししたいと思います。

賃金の時間単価 × 割増率 × 時間外労働時間

これが、時間外労働をした場合の労働基準法上の割増賃金の計算方法です。

「労働基準法上の」と表現したのは、会社の就業規則・給与規定等で割増賃金の計算方法が定められている場合は、その方法によって計算することになるからです。

ただし、就業規則・給与規定等の定めよりも労働基準法上の計算方法の方が労働者にとって有利となる場合は、労働基準法上の計算方法によって計算すべきこととなります。

「賃金の時間単価」の計算方法

「賃金の時間単価」の計算方法

上記の労働基準法上の割増賃金の計算式

賃金の時間単価 × 割増率 × 時間外労働時間

のうち、「賃金の時間単価」の計算方法についてお話しようと思います。

「賃金の時間単価」は、(月によって定められた賃金の場合)

1か月の所定賃金 ÷ 1か月の所定労働時間数

という計算式で算定します。

では、「1カ月の所定賃金」とはいかなる範囲の賃金を指すのでしょうか。一口に「賃金」といっても、基本給のほか、さまざまな手当もつきますよね。

結論としては、「賃金の時間単価」算定の基礎となる「1カ月の所定賃金」からは、次のものは除外されます。

  • 家族手当
  • 通勤手当
  • 別居手当
  • 子女教育手当
  • 住宅手当
  • 臨時に支払われた賃金
  • 1カ月を超える期間ごとに支払われる賃金

このことは、労働基準法37条5項、労働基準法施行規則21条により定められています。

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※本記事は、公開日時点の法律や情報をもとに執筆しております。