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LEGAL COLUMN

法律コラム

公開日:2022.12.13

CASE

  • 企業法務

改正職業安定法2022|求人企業の注意点とは|弁護士が解説

目次CONTENTS

求職者が安心して求職活動ができる環境の整備と、求人メディア等のマッチング機能の質の向上などを目的とした「改正職業安定法」が2022年10月に施行されました。改正のポイントについて、企業法務に精通する福岡・佐賀の弁護士法人 桑原法律事務所の弁護士が解説します。

職業安定法:改正のポイントとは

職業安定法とは、求職者に就職の機会を与え、必要な労働力を充足し、職業の安定を図ることを目的とした法律です。職業紹介や労働者募集など、労働市場の基本的なルールについて定められています。

今回の改正の主なポイントは以下の4つです。

  1. 募集情報等提供の定義が拡大
  2. 特定募集情報等提供事業者の新設と届出制の導入
  3. 求人等に関する情報の的確な表示の義務化
  4. 特定募集情報等提供事業者も個人情報に関する規定の対象に

企業が人材募集を行うにあたって、改正によりどのような対応が必要となるのか、以下で確認していきましょう。

改正1. 「募集情報等提供」の定義が拡大

従来の求人メディア以外にも、職業安定法に規定のない新たな形態のサービスが登場したことを背景に、「募集情報等提供」の定義が拡大されました。

求人メディアだけでなく、インターネット上の公開情報等から収集(クローリング)した求人情報・求職者情報を提供するサービス等を行う事業者も、職業安定法の「募集情報等提供事業者」になります。

募集情報等提供事業者に該当するのは、下記などを事業として提供している場合です。

  • 求人サイト、求人情報誌、求人情報を投稿するSNS
  • クローリング型求人サイト
  • 人材データベース、求職者情報を登録・投稿するSNS
  • クローリング型人材データベース

事業であるかどうかは、募集情報等提供を業として行っているかという点で判断されます。

改正2. 「特定募集情報等提供事業者」の新設、届出制を導入

 

「特定募集情報等提供事業者」とは、募集情報等提供事業者のうち、求職者に関する情報を収集して募集情報等提供事業を行う者をいいます。なお、求職者情報を収集していても、募集情報等提供に用いていない場合は、特定募集情報等提供には該当しません。

今回の改正では、特定募集情報等提供事業者に対し、届出制が導入されました。厚生労働大臣に、「氏名又は名称及び住所その他の厚生労働省令で定める事項」を届け出なければならないとされています。届出方法は、原則オンラインによることとされています。

さらに、特定募集情報等提供事業者は年に1度、提供している募集情報等の規模等の事業概況報告書を作成し、厚生労働大臣に提出しなければなりません。2022年10月1日時点で特定募集情報等提供事業を行っている事業者は、2022年12月31日までに届け出る必要があります。

届け出が必要な例

  • 会員登録を求めている場合
  • メールアドレスを集めて配信している場合
  • 閲覧履歴に基づく情報提供をしている場合

届け出は不要な例

  • 紙媒体でのみ情報提供している場合

届け出をしなかった場合や、虚偽の届け出をした場合などは、罰則も定められていますので注意が必要です。

改正3. 求人情報の的確な表示の義務化

 

求人企業や募集情報等提供事業者、職業紹介事業等(以下、各事業者といいます)に対して、求人等に関する下記の情報(募集情報)についての的確な表示が義務付けられます。

  • 求人情報
  • 求職者情報
  • 求人企業に関する情報
  • 自社に関する情報
  • 業務の実績に関する情報

また、求人企業は、虚偽または誤解を生じさせる表示を禁止され、求人情報を最新かつ正確な内容に保つ(ための措置を講じる)ことが義務付けられます。また、職業紹介事業者、募集情報等提供事業者は、求人情報・求職者情報を最新かつ正確な内容に保つ(ための措置を講じる)ことが義務付けられます。

対象となる求人情報等は、新聞・雑誌、ウェブサイト・アプリ、テレビ・ラジオなど、あらゆる手段を通じて提供される情報が幅広く対象となります。

3-1. 虚偽の表示とは

「虚偽の表示」とは、具体的には、意図して以下のような表示を行う場合などです。

  • 実際の労働条件とは異なる情報を表示する
  • 実際に募集を行う企業とは別の企業の名前で求人を行う
  • 採用予定のない求人を出す
  • 「正社員」と謳いながら「アルバイト・パート」の募集をする
  • 実際の賃金よりも高額な賃金の求人情報を掲載する
  • 受理していない求人を紹介できると広告する

なお、当事者の合意に基づき、求人情報から実際の労働条件を変更する場合は、虚偽の表示にはあたりません。

3-2. 誤解を生じさせる表示とは

「誤解を生じさせる表示」とは、虚偽の情報でなくとも、一般的・客観的に誤解を生じさせるような表示をいいます。

具体的には、以下のような例が挙げられます。

賃金等について誤解を生じさせる表示の例

  • 固定残業代について、基礎となる労働時間数等を明示しない。
  • 固定残業代について、基本給に含めて表示する。
  • モデル収入として、社内で給与の高い労働者の基本給を例示し、すべての労働者に必ず支払われる基本給であるかのように表示する。

請負契約と雇用契約を混同させる表示の例

  • フリーランス等の請負契約の募集であることを明示せず、雇用契約を前提とした労働者の募集と混同されるような表示をする。

職種または業種について誤解を与える表示の例

  • 営業職が中心の業務を「事務職」と表示する。
  • 契約社員の募集を「試用期間中は契約社員」など正社員の募集であるかのように表示する。

募集者の名称等について誤解を与える表示の例

  • 優れた実績を持つグループ企業の情報を大きく記載する等、実際の求人企業とグループ企業が混同されるような表示をする。

3-3. 正確かつ最新の内容に保つ義務

各事業者は、以下のような措置を講じるなどして、求人情報を正確・最新の内容に保たなければなりません。

以下では、求人企業の対応例についてご紹介します。

  • 募集を終了・内容を変更したら、速やかに募集情報の提供を終了・内容を変更する。(例:自社の採用ウェブサイト等を速やかに更新する。)
  • 求人メディア等の募集情報等提供事業者を活用している場合は、募集の終了や内容変更を反映するよう速やかに依頼する。
  • いつの時点の求人情報かを明らかにする。(例:募集を開始した時点、内容を変更した時点など)
  • 求人メディア等の募集情報等提供事業者から、求人情報の訂正・変更を依頼された場合には、速やかに対応する。

厚生労働省リーフレット「労働者の募集ルールが変わります」より

改正4. 特定募集情報等業者も個人情報に関する規定の提供事対象に

求人企業はこれまでも職業安定法の個人情報に関する規定の対象となっていましたが、新たに「特定募集情報等提供事業者」も対象となりました。

求人企業・職業紹介事業者・募集情報等提供事業者が求職者の個人情報を収集する際には、業務の目的を明らかにして、労働者の募集のために必要な範囲内で個人情報を収集・使用・保管しなければなりません。

業務の目的を明らかにする際は、「個人情報がどのような目的で収集され、保管され、または使用されるのか」といった点を、求職者が一般的かつ合理的に想定できる程度に、具体的に明示する必要があるとされています。

2022年職業安定法の改正について 詳しくはこちら

求職者のチェックポイントとは

職業安定法の改正によって、求人メディアなどに関するルールが整備され、求職者としてはより安心して雇用仲介サービスを利用できるようになります。

採用活動を実施している企業は、公開している求人情報に不備がないか、求職者の個人情報に関して適切な対応ができているかなど、いま一度見直しましょう。

桑原法律事務所は、労働問題や経営に関するお悩みに対し、法的に問題がないか解決への道を探します。まずはお気軽にご相談ください。

 

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