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LEGAL COLUMN

法律コラム

公開日:2022.12.13

CASE

  • 労働問題(企業側)
  • 企業法務

裁量労働制とは | メリット・デメリット | 弁護士が解説

目次CONTENTS

裁量労働制とは、労働者の裁量によって働き方を決める仕組みです。実際に働いた時間にかかわらず、一定の時間だけが労働したものとみなされます。裁量労働制のメリット・デメリットや対象の職種について、福岡・佐賀の弁護士法人 桑原法律事務所の弁護士が解説します。

裁量労働制とは

「裁量労働制」とは、労働者が使用者(雇い主)と契約する労働形態の一種です。

一般的な契約では1日の就業時間が決まっていて、定められた労働時間を超えると、その時間に応じた残業代が支払われます。

一方、裁量労働制では就業の開始や終了の時間に決まりはなく、労働者自身の裁量に任せられ、報酬は労使の契約によって決められた「みなし労働時間」にあわせて支払います。

「みなし労働時間」が「1日8時間」と定められていれば、実働が6時間だろうと10時間だろうと、8時間分の給与が支払われます。

裁量労働制は、「専門業務型裁量労働制」「企画業務型裁量労働制」の2種類に分類されます。

それぞれ定められた対象業務にしか適用されません。

「専門業務型」の対象職種

下記の19職種が対象で、事業場の過半数の労働組合か、過半数の代表者との労使協定を締結することによって導入が可能です。

  • 新商品・新技術の研究開発又は人文科学若しくは自然科学に関する研究の業務
  • 情報処理システムの分析・設計
  • 新聞・出版の取材記者・編集者
  • 衣服や広告等のデザイナー
  • 放送・映画のプロデューサー、ディレクター
  • コピーライター
  • システムコンサルタント
  • インテリアコーディネーター
  • ゲームソフト創作者
  • 証券アナリスト
  • 金融商品の開発
  • 大学での教授研究
  • 公認会計士
  • 弁護士
  • 建築士
  • 不動産鑑定士
  • 弁理士
  • 税理士
  • 中小企業診断士

専門型裁量労働制を導入するには、原則として下記を労使協定によって定め、所轄の労働基準監督署長に所定の書類を届けなければなりません。

(1)  制度の対象とする業務
(2)  対象となる業務遂行の手段や方法、時間配分などについて、労働者に具体的な指示をしないこと
(3)  労働時間としてみなす時間
(4)  対象となる労働者の労働時間の状況に応じて実施する健康・福祉を確保するための措置の内容
(5)  対象となる労働者からの苦情の処理のため実施する措置の内容
(6)  協定の有効期間(3年以内が望ましい)
(7)  (4)及び(5)について、労働者ごとに講じた措置の記録を、協定の有効期間及びその期間満了後3年間保存する

「企画業務型」の対象職種

「企画業務型」は営業上の重要な決定がされる企業の本社などで、企画、立案、調査及び分析を行う労働者を対象としています。

「企画業務型裁量労働制」を導入できるのは、対象となる業務がある場所です。

以下の職場が該当します。

1 本社・本店
2 1のほか、次のいずれかに掲げる職場

  • 職場が属する企業などにかかる事業の運営に影響がある決定がされる場所
  • 本社・本店の具体的な指示を受けることなく独自に、事業の運営に影響がある事業計画や営業計画を決定している支社・支店など

個別の製造等の作業や当該作業に係る工程管理のみを行っている職場や、本社・本店または支社・支店などの指示を受けて、個別の営業活動のみを行っている職場は導入できません。

企画業務型裁量労働制を導入するには、労使委員会をつくり、準備について話し合います。労使委員会の委員を選び、ルールを定めて決議し、対象者の同意を得ることが必要です。

 

裁量労働制のメリット、デメリット

労使にとっての裁量労働制のメリットは、下記などが挙げられます。

  • 仕事にかける時間ややり方を、労働者の裁量で決められます。求められる成果を上げれば、出社・退社も自由です。
  • 所定の労働時間よりも短い時間で求められる結果を出せば、短い勤務時間で定まった給与が得られます。
  • 満員電車を避けたり、子どもの授業参観などに行ったりするなど、融通が効くのは生活の質の向上に大きく貢献するでしょう。
  • 仕事の効率や生産性アップが見込めると、企業の業績向上も期待できます。
  • ひとりひとりの働き方を尊重している企業はイメージアップにつながります。優秀な人材が集まり、離職率の低さにもつながります。
  • 企業にとっては人件費を想定しやすくなります。原則として時間外労働による残業代が発生しません。残業代の計算にかかっていたコストが大幅に軽減され、労務管理も簡単になると思われます。
  • ただし休日出勤など割増賃金の支払い義務はあり、残業代がゼロになるわけではありません。「みなし労働時間」が法定労働時間である8時間を超えると、超えた時間については時間外割増賃金が発生します。

時間外労働と割増賃金の計算について 詳しくはこちら

反対にデメリットは、下記などが挙げられます。

労働者側のデメリット

  • 「みなし労働時間」を超えて働いても、超えた分の残業代は原則として出ません。みなし労働時間を8時間とした場合、10時間働いても2時間分の残業代は支払われません。

使用者側のデメリット

  • 制度の導入に時間がかかります。労使協定や就業規則を見直し、所定の手続きが必要です。
  • 働いている時間がまちまちになるので、チームで行う仕事は工夫が必要になります。
  • 労働時間によらず、成果重視型の人事評価に変更する必要性があるかもしれません。
  • 裁量労働制と一般的な働き方の社員が同じ職場にいると、立場の違いからコミュニケーションに問題が出る可能性があります。

 

裁量労働制「満足」8割:一方で問題点も

厚労省は2021年、裁量労働制についての実態調査について、結果を公表しました。専門型裁量労働制が適用されている労働者がいる適用事業場では、「特に意見はない」(39.5%)が最も高く、「今のままでよい」(37.9%)、「制度を見直すべき」(15.8%)と続いています。

企画型裁量労働制が適用されている労働者がいる適用事業場では「制度を見直すべき」(39.7%)が最多で、「今のままでよい」(33.9%)、「特に意見はない」(23.8%)とい続いています。

適用労働者に対して裁量労働制の適用について満足しているかどうか尋ねたところ「満足している」(41.8%)が最も高く、「やや満足している」(38.6%)とあわせると、肯定的な意見は8割近くにのぼっています。

その一方で、本来は裁量労働制の対象にならない職種なのに、残業代を払いたくない使用者によって裁量労働制にされているケースもあるとされ、問題視する見方もあります。

裁量労働制の適正な運用には、労使とも制度の趣旨・目的を理解し、周知を徹底する必要があります。

弁護士法人桑原法律事務所は、創業25年目の法律事務所です。九州北部に3拠点(福岡・佐賀・武雄)を展開しております。

従業員との紛争が発生した場合、その対応には大きな労力が必要となります。
また、労務管理について、事前に法的な対策を講じておくことで、労使紛争リスクを未然に防ぐことが可能です。

労働問題でお悩みの際は、当事務所の弁護士にお気軽にご相談ください。就業規則のリーガルチェックや作成についても承っております。

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