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公開日:2023.02.20

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遺留分侵害額請求とは | 認められるのは | 時効は | 手順を解説

目次CONTENTS

遺留分侵害額請求とは | 認められるのは | 時効は | 手順を解説

ご家族が亡くなって相続が発生した場合に、遺言書等が不公平な内容になっていると、遺産分割をめぐって争いになるケースがあります。遺留分とは、一定の範囲の相続人に認められている被相続人(亡くなった方)の遺産の取得分をいいます。この遺留分を侵害された場合、一定の法定相続人には返してもらう権利があります。

遺留分侵害額請求について、相続問題に精通する福岡・佐賀の弁護士法人 桑原法律事務所の弁護士が解説します。

 

遺留分とは

遺留分とは、一定の法定相続人について、被相続人(亡くなった人)の財産から法律上、得ることが保障されている最低限の取得割合のことをいいます。

民法は、被相続人が自らの財産を自由に処分できることを原則としていますが、同時に、兄弟姉妹以外の相続人に一定の相続分を確保し、生活保障を図る趣旨から、これらの相続人について一定額の相続財産を確保する制度を定めました。これが「遺留分制度」です。

遺留分は法律によって保障された権利であり、遺言によっても侵害することはできません。

遺留分を侵害された人(遺留分に相当する遺産を受け取ることができなかった人)は、遺贈や贈与を受けたことにより遺留分を侵害した人に対して、侵害された額に相当する金銭の支払いを請求できます。

 

遺留分が問題になるケースとは

不公平な内容の遺言書がある場合には、遺留分について問題が起きることがあります。

たとえば、特定の相続人や第三者に対して、多額の遺贈が行われるような内容の遺言書が存在するといったケースです。この場合、少ない財産しか相続できない人や相続分がない人は不満に思い、遺留分を巡って争いになることがあります。

ほかにも、一部の相続人に対して生前贈与が行われていた場合にも、遺留分について争いになることがあります。

たとえば、被相続人が生前、長男にだけ事業資金を贈与していたとか、長女にだけ不動産を贈与していた、次男にだけ多額の学費を支払っていた、といったようなケースです。

遺留分権利者とは:遺留分が認められる法定相続人

遺留分権利者(遺留分を請求する権利を持つ人)について、民法では、兄弟姉妹以外の法定相続人と定められています。

具体的には、以下の通りです。

  • 配偶者:夫または妻が法定相続人である場合
  • 直系卑属(ひぞく):子どもや孫、ひ孫などの被相続人の直接の子孫
  • 直系尊属(そんぞく):父母や祖父母、曾祖父母などの被相続人より前の世代で、直接の先祖。子と子の代襲相続人(本来の相続人の子など)がいない場合のみ

遺留分侵害額請求権の時効とは

 

遺留分侵害額請求には時効があります。

遺留分侵害額請求をする場合は、時効の前に権利を行使する必要があります。

 

民法第1048条(遺留分侵害額請求権の期間の制限)
遺留分侵害額の請求権は、遺留分権利者が、相続の開始及び遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったことを知った時から一年間行使しないときは、時効によって消滅する。相続開始の時から十年を経過したときも、同様とする。

 

1. 相続の開始と遺留分侵害を知った時点から1年

 

遺留分権利者が、「相続の開始および遺留分を侵害する贈与または遺贈があったことを知った時から1年間」のうちに権利を行使しない場合は、時効により遺留分侵害額請求権は消滅します。

たとえば、遺言書などに、「すべての遺産を、自分以外の他の兄弟姉妹に遺贈する」という内容が書かれていると知った時点からなどです(ただし、実際に知った時点を証明するのが難しいケースなど、「知った時」がいつかが問題になるケースもあります)。

遺留分侵害額請求権は、遺留分権利者が「遺留分侵害額請求をする」との意思表示をすれば、請求の効果が生じます。相続の開始および遺留分を侵害する贈与・遺贈があったことを知った時点から1年以内に、一度でも意思表示をしておけば、遺留分侵害額請求権が時効により消滅することを防ぐことができます。

2. 相続開始から10年で「除斥消滅」

 

相続の開始から10年が経過した場合、遺留分侵害額請求権は除斥期間により消滅します。除斥期間とは、法律で定められた期間のうち、その期間内に権利を行使しないと権利が当然に消滅する期間のことをいいます。

除斥期間は、消滅時効とは違い、期間の進行を中断(更新、完成猶予)することはできません。

被相続人が亡くなったことを知らなかった場合でも、相続開始から10年が経過すると、遺留分は請求できなくなります。

 

3. 遺留分を請求した後の時効

ほかにも、遺留分を請求した後にも時効があることに注意が必要です。

遺留分侵害額請求権は金銭による返還が原則ですので、遺留分を請求した後は金銭債権と同様の消滅時効が適用されます。

金銭債権の消滅時効期間は、相続開始のタイミングに応じて、以下のとおりです。

 

  • 2020年3月31日以前に行使した遺留分侵害額請求権: 10年
  • 2020年4月1日以降に行使した遺留分侵害額請求権: 5年

 

2020年4月の民法改正で、消滅時効に関する規則が変更されたことにより、上記のような違いがあります。

遺留分侵害額請求の手続き:調停、訴訟

遺留分侵害額の請求について当事者間で解決できない場合や、話し合いそのものが困難な場合は、家庭裁判所の調停を利用して解決を図ることができます。

なお、前述のとおり、遺留分侵害額請求権の消滅時効の期間は1年と短いため、まずは内容証明郵便を送付するなどの方法により、「遺留分侵害額請求をする」旨の意思表示を行う必要があります。

調停でまとまらず決裂した場合は、訴訟を提起します。訴訟で主張が認められれば、相手方が遺留分の履行をしない場合、強制執行手続をとることができます。

調停は裁判所での話し合いですので、ご自身で対応することも可能ですが、調停委員や裁判官に対し、自分の主張を認めてもらうための合理的な説明をしなければなりません。また、訴訟に発展する可能性も想定しながら、戦略的に対応することが望ましいでしょう。

そのため、法律の専門家である弁護士にご依頼いただくことをおすすめいたします。

 

Q.遺留分侵害額請求で、不動産をもらうことはできますか?

A.

被相続人が亡くなった時期が2019年7月1日以降の場合は、民法改正により、遺留分は金銭債権(お金を請求する権利)として扱われますので、原則として不動産をもらうことはできません。

もし遺産に不動産がある場合は、遺留分の算定のために不動産価格を評価しなければなりません。不動産評価は原則、相続開始時の価格が基準となります。

なお、相手方(遺留分侵害額請求された側)が、金銭の支払いの代わりに不動産の相続を認めるという解決方法に応じる場合には、不動産を取得できる可能性があります。

 

遺留分制度の具体的事例を見てみましょう

 

遺留分制度とは何かを理解するために、次のような事例を見てみましょう。

 

A男は20歳の頃、亡先妻B子と結婚し、2人の間にC男が生まれました。

B子は数年前に亡くなり、A男はD子と再婚しました。A男とD子との間にはE女が生まれました。

A男の死後、全財産をD子に相続させる旨の遺言書が発見されました(便宜上、ここでは金銭債権のみとします)。C男は不満を持っていますが、遺言書がある以上、どうしようもないのでしょうか。

 

たとえば、「被相続人A男が妻D子に全財産を相続させる」旨の遺言は、それ自体有効ではあるのですが、この遺言は、結果としてC男やE女の相続権を侵害していることになります。

こうした場合、C男やE女には、遺留分侵害額請求権が認められています(行使しない自由もあります)。

遺留分侵害額請求を行使した場合、一定の限度(法定相続分ではありません)について遺言の効力が失われ、その限度で遺留分権利者が権利を取得することになります。

事例でいえば、C男は、相続財産の価額の8分の1部分について遺留分を有しており、この限度で遺留分侵害額請求を行うことができます。

なお、厳密には、財産の価額について生前贈与の額、遺留分侵害額について特別受益の額などを考慮する必要がありますが、ここでは割愛いたします。

 

遺留分侵害額請求については弁護士にご相談を

 

遺留分については、法的に検討しなければならない事項が多々あり、とても複雑です。「遺留分が侵害されている」「遺留分侵害額請求をしたい」という場合は、できるだけ早く専門家に相談し、手続きをしましょう。

法律の弁護士にご依頼いただくことで、精神的な負担を減らしながら、確実に手続きを進めることができます。

当事務所は、遺留分をはじめとした相続問題について、無料相談(初回30分)を承っております。お悩みの方は、まずはお気軽にご相談ください。

 

※本記事は、公開日時点の法律や情報をもとに執筆しております。