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法律コラム

公開日:2023.03.13

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相続土地国庫帰属法とは | 対象になる土地・手続きの流れ | 弁護士が解説

目次CONTENTS

相続などで所有した土地を手放したいというニーズに対応するため、要件を満たせば土地を国庫に帰属することができる決まりを定めた「相続土地国庫帰属法」が2023年4月、施行されます。主なポイントについて福岡・佐賀の弁護士法人 桑原法律事務所の弁護士が解説します。

相続土地国家帰属制度の背景

山林や農地などを相続したものの「遠くに住んでいて利用しない」などの理由から、土地を手放したいという人が増えています。

現行の民法では原則として、相続財産の一部のみを放棄し、必要な財産のみ相続するということは認められていません。そもそも相続放棄とは「被相続人の財産を一切、相続しないこと」を意味します。このため、「欲しくない土地だけを相続放棄する」ということはできません。

一方で、このような土地が管理されないまま放置されると、所有者が分からない土地になり、公共事業や災害復興の妨げになってしまう恐れがあります。

こうした事態を防ぐための制度のひとつとして、相続や遺贈によって取得した土地を手放し、国家に帰属させることができる相続土地国家帰属制度が設けられました。

申請・手続きの流れ

相続や遺贈により土地を得た人で、国庫への帰属を希望する人は、下記のような手続きをとる必要があります。

  1. 法務局に承認を申請:申請書と審査手数料などが必要です。
  2. 要件の審査:法務局が書類を審査します。実地調査をおこなうこともあります。却下や不承認要件に該当すれば、却下や不承認となります。判定に不服がある場合、審査や訴訟により不服申し立てが可能です。
  3. 承認:承認された旨と負担金の額が申請した人に通知されます。
  4. 負担金を納付:申請した人は指定された、10年分の土地管理費に相当する額を支払います。
  5. 国庫に帰属:負担金の納付があった時点で、土地の所有権が国庫に帰属します。

国庫に帰属した土地は、「普通財産(行政財産以外の公有財産)」として国が管理・処分します。主に農用地や森林として利用されている土地は農林水産大臣が管理・処分し、それ以外は財務大臣が管理・処分します。

続土地国家帰属制度を利用できる人

 

国庫に帰属することを申請できるのは、下記などの人が対象です。

  • 相続などにより土地の全部または一部を取得した人(単独所有の土地)
  1. 父の土地を子1人が相続した場合:子が申請可能です。
  2. 母が自分の土地を子A、子Bに売却したのち、子Aが子Bの持分を相続によって取得した場合(相続分は1/2)など:子Aが申請可能です。
  • 相続などにより土地の共有持分の全部または一部を取得した共有者(共有に属する土地)
  1. 父の土地を子A、子B(持分1/2ずつ)が相続した場合:子A、子Bともに申請が可能です。
  2. 第3者から母と子Aが共同購入(持分1/2ずつ)したのち母の購入分を子A、子Bが相続により取得(子Aの持分3/4、子Bの持分1/4)した場合:子A、Bともに申請が可能です。
  3. 第3者から父と法人が共同購入(持分1/2ずつ)したのち、父の持分を子1人が相続した場合(子の持分1/2<相続>、法人の持分1/2):法人は本来、申請権限がありませんが、子と共同申請すれば申請が可能です。

国庫に帰属できない土地とは

国に引き取ってもらえない土地は、下記のようなケースがあります。簡単にいうと、通常以上のコストや労力がかかる土地は引き取ってもらえません。

  1. 建物がある土地
  2. 担保権または使用する権利が設定されている土地や、収益を目的とする権利が設定されている土地
  3. 通路など、他人による使用が予定される土地(墓地、境内地、現に通路・水道用地などに使われている土地)
  4. 土壌汚染対策法上の特定有害物質により汚染されている土地
  5. 境界が明らかでない土地など所有権があるのかないのかなど、帰属や範囲をめぐって争いがある土地

上記の5項目いずれかに当たると申請は却下されます。

  1. がけ(勾配が30度以上、かつ高さ5メートル以上)があって、管理に通常以上の費用や労力がかかる土地
  2. 土地の通常の管理または処分を阻害する工作物、車両または樹木など、形があるもの(有体物)が地上にある土地
  3. 除去しなければ土地の通常の管理または処分をすることができない有体物が地下にある土地
  4. 隣接する土地の所有者などと、争訟しなければ通常の管理または処分することができない土地
  5. 通常の管理や処分をするに当たり、通常以上の費用または労力がかかる土地

6~10のいずれかに該当すると、申請は不承認になります。

国庫帰属の負担金

国庫に帰属するには「負担金」が必要です。「土地管理費10年分」に相当する額を納めなければなりません。金額は、土地に応じた標準的な管理費用を考慮して計算されます。そのほか、申請時には審査に要する手数料も納付します。

負担金算定の例は下記のようになります。

  1. 宅地:面積にかかわらず20万円。ただし、都市計画法で市街地区域または用途地域が指定されている一部の市街地の宅地については、面積に応じて算定します。例)100平方メートル=およそ55万円、200平方メートル=およそ80万円など
  2. 田畑:面積にかかわらず20万円。ただし1.と同様、市街地や農用地区域などの田畑については、面積に応じて算定します。例)500平方メートル=およそ72万円、1000平方メートル=およそ110万円など
  3. 森林:面積に応じて算定します。例)1500平方メートル=およそ27万円、3000平方メートル=およそ30万円など
  4. その他(雑種地、原野など):面積にかかわらず20万円

 

弁護士にご相談ください

 

相続土地国庫帰属法が施行されると、相続手続きにおける選択肢が増えますが、どの選択肢を選ぶかは、当事者によってケースバイケースです。土地を相続して悩みがある場合、弁護士にご相談ください。弁護士は冷静かつ客観的な視点で問題をひも解き、早期解決へと導きます。

当事務所は、総合法律事務所として、土地の問題のほかにも借金問題や不動産問題などの幅広い分野で多数の対応実績があります。

これまで培ってきた幅広い知見と高い交渉技術を活用して、依頼者様をサポートいたします。幅広い業務領域を扱うことで、様々な案件に関する多角的・包括的解決のための知識や経験を蓄積しており、大きな強みとなっています。

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※本記事は、公開日時点の法律や情報をもとに執筆しております。