公開日:2023.04.17
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賠償責任条項とは | 契約書の注意点 | 弁護士が解説
【本記事の監修】 福岡の弁護士 弁護士法人桑原法律事務所 弁護士 桑原貴洋 (代表/福岡オフィス所長)
- 保有資格: 弁護士・MBA(経営学修士)・税理士・家族信託専門士
- 略歴: 1998年弁護士登録。福岡県弁護士会所属。
日本弁護士連合会 理事、九州弁護士会連合会 理事、佐賀県弁護士会 会長などを歴任。
目次CONTENTS
ビジネスに欠かせない契約書に必ず記載するのが、「賠償責任」です。賠償責任条項で何を定めたらよいのでしょうか。予防法務の見地から、トラブルを避けるための内容やポイントについて、福岡・佐賀の弁護士法人 桑原法律事務所の弁護士が解説します。
企業法務の3類型とは
企業法務の役割は①臨床法務(紛争解決)②予防法務③戦略法務の3つに分けられます。
- 臨床法務とは、倒産や訴訟、クレームなど、実際に起きてしまったトラブルに対応し、法的な解決をめざす法務を意味します。「何か困ったことが起きたら相談しよう」と考えている経営者の方も多いかと思いますが、近年では②予防法務、③戦略法務の必要性がさらに高まっており、「トラブルになってからでは遅い」が会社経営の常識となっているようです。
- 予防法務とは、企業が法的紛争を避けるため、事前に法的リスクを予測し、これを予防する対策をいいます。企業が取引をする際に取り交わす契約書のチェックも、予防法務にあたります。
- 戦略法務とは、企業の経営戦略について、法的アプローチから助言する法務を意味します。新規事業の立ち上げ・海外進出・企業の買収や合併などにも関与します。
契約書チェックは「予防法務」
「契約書」とは、自分(自社)と相手方(取引先)との今回及び今後のルールを明確にした書面といえます。
単発の仕事では契約書の作成は省くケースもあるでしょうが、継続的に取引したい場合には、契約書をもって相互のルール作りを行うことは多いでしょう。
契約書はなるべく自社に有利な内容にしたいと考えがちです。たとえば損害賠償の制限条項や免責条項、相手方にだけ義務を課す内容などです。
しかし自社に有利な契約条項ばかりを主張した場合、相手方は不満を感じ、契約期間中に何かあれば、契約締結時の不信感が契約解消の決め手になってしまいかねません。
反対に、自社の提供する契約書式が、自社に厳格な義務を課し、相手方のちょっとしたミスは許容するような内容のものである場合を考えてみましょう。
このような契約書式での契約提案を受けた取引先は、自社の製品やサービスにそれほど自信があるのかと感動し、ずっと使い続けてくれるかもしれません。
自社にばかり有利な契約書式や、ネットに多く見かけるフォーマットを流用して契約書をつくっている場合、相手と対等でウィンウィンの関係となれる取引関係を築けるよう、見直してみるのがよいでしょう。
契約書の賠償責任条項とは
ここでは②予防法務の見地から、契約書における賠償責任条項について解説します。
賠償責任条項とは、当事者が契約書や法律の義務に違反した場合の損害賠償に関するルールのことです。賠償責任条項のチェックでは、(1)責任の内容、(2)損害の範囲を中心に確認する必要があります。
責任の内容について
責任の内容とは、「どのような場合に損害賠償責任を負うか」ということです。民法では、「責めに帰すべき事由があること」、つまり、「故意または過失」がある場合に賠償責任を負うと定められています。簡単にいえば、故意とは「わざと」、過失とは「不注意」のことです。
過失については、不注意の程度によって、「軽過失」、「重過失」と区別されることがあります。もし、契約書に「故意または重過失が認められる場合に損害賠償責任を負う」と定められている場合、責任の内容がかなり限定されることになりますので注意が必要です。
また、賠償責任条項は、どちらか一方のみに定められるのではなく、両者につき定めておくのが無難でしょう。
では、「不可抗力」の場合はどうでしょうか。「不可抗力」とは、天災等の当事者では抑止することのできない事象をいいます。例えば、大震災が発生し、交通網が遮断され期限に間に合わなかった場合等です。一般的に、当事者に「故意または過失」がなく、「不可抗力」によってトラブルが生じた場合には、賠償責任を負いません(ただし、金銭債務の不履行は不可抗力を理由として責任を免れることはできません)。
なお、「不可抗力」が具体的に何を指すのか等、賠償責任条項のほかに不可抗力条項も定めておくべきでしょう。
損害の範囲について
当事者の一方が契約書や法律の義務に違反して、他方に損害が発生したとしても、あらゆる損害を賠償しなければならないというわけではありません。民法では、この義務の違反(債務不履行)と、損害との間に相当因果関係が認められる必要があるとしています。
しかし、契約書で取り扱う取引の形態・内容は様々であり、何が損害にあたり、どこまでが損害に含まれるかトラブルになってしまうことがあります。そこで、賠償すべき損害をあらかじめ特定(制限)しておくことでトラブルを回避することが考えられます。
1つ目は、損害の内容を特定(制限)するという方法です。民法では、損害の内容を「通常損害」と「特別損害」に区別しています。
通常損害
債務不履行によって社会通念上通常発生する損害をいいます。例えば、目的物が納品されなかったことで、代替品を購入した場合の費用と売買代金との差額がこれにあたります。
特別損害
通常損害以外の「特別の事情」によって発生する損害をいいます。当事者がその特別の事情を予見すべきであったときに賠償請求できる損害として認められます。例えば、目的物の転売利益がこれにあたります。
契約書では、例えば「特別損害を除いて通常損害に限る。」と記載することで損害の内容を特定(制限)することができます。
なお、「通常損害」、「特別損害」の他にも、「間接損害」、「結果損害」、「偶発損害」等損害の費目として契約書に記載されることがありますので、損害の内容を正しく理解し、損害として含めるか否かを検討することが求められます。
2つ目は、損害の賠償額(金額、数量)を制限するという方法です。
契約書では、例えば、「賠償すべき損害の上限は本契約に基づく取引金額の総額とする」と明記することがあります。賠償額の上限を設けることにより、賠償責任に対する予測可能性を確保することができます。
弁護士にご相談ください
「契約」は、ビジネスに欠かせないものです。契約の際には、契約事項に不利益となるものがないか等、あらゆるリスクを想定しておく必要があります。
弁護士に自社の製品やサービスの特性を理解してもらった上で、包括的にチェックしてもらうことをお勧めいたします。
当事務所では、クライアントの個別の事情を十分に理解したうえで、それぞれに適した契約書を作成いたします。また、契約書のリーガルチェックも承っております。
トラブルが発生してから対応するよりも、予防する方が断然、コストはかからずに済みます。無用なリスクを最小限にするために、弁護士にぜひご相談ください。
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