公開日:2021.03.14 最終更新日:2022.03.15
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物損事故で賠償請求、3つの注意点とは|物損事故で慰謝料をもらえた例

【本記事の監修】 福岡の弁護士 弁護士法人桑原法律事務所 弁護士 桑原貴洋 (代表/福岡オフィス所長)
- 保有資格: 弁護士・MBA(経営学修士)・税理士・家族信託専門士
- 略歴: 1998年弁護士登録。福岡県弁護士会所属。
日本弁護士連合会 理事、九州弁護士会連合会 理事、佐賀県弁護士会 会長などを歴任。
目次CONTENTS
物損事故で慰謝料をもらえるのでしょうか。賠償される損害や修理代を請求する際の注意点について、交通事故に精通する福岡・佐賀の弁護士法人・桑原法律事務所の弁護士が解説します。
物損事故とは:警察では「物件事故」
「物損事故」とはケガ人が出ず、物の損壊のみ生じた交通事故のことです。「人身事故」との違いはケガ人の有無です。
車両同士の衝突事故のほか、ガードレールや壁、電柱への衝突事故なども、ケガ人がいなければ物損事故です。
警察などでは「物件事故」と呼ばれます。事故が起きると警察に届け出てから、各都道府県の交通安全運転センターに申請し「交通事故証明書」を発行してもらいます。自賠責保険や自動車保険を使うのに必要です。下が見本です。
見本の右下欄(「照合記録簿の種別」欄)には「人身事故」とある欄に、「物件事故」と記載されます。
ケガ人が出た交通事故は「人身事故」と言います。上記のように、交通事故証明書に「人身事故」と記載されます。
物損事故で請求できる損害(物的損害)とは
相手に過失がある場合には、相手に対する損害賠償請求権があります。具体的には下記があげられます。
- 車両損害:修理費用(または車両時価額・買い替え諸費用)など
実際に車両に損傷が残っていれば、修理しない段階でも、修理費用の支払いを求める権利があります。修理代については見積りをしてもらいます。
修理費用が車両時価額を上回るケースでは
たとえば「時価額30万円の車の損傷が激しく、修理に200万円はかかる」という場合、時価額(30万円)と買い替え諸費用に関して、支払いを求めることができます。
修理費用(例では200万円)が車両時価額と買い替え諸費用(例では30万円+α)を上回るケースは「経済的全損」と呼ばれます。
- レッカー代:自走できなくなり、レッカーを利用した場合
- 代車代:修理または買い替え判断に必要な期間に、レンタカーを借りて費用が発生
賠償金は基本的に上記の総額となります。お互いに過失があるような事故では、損害について相殺処理されることも多いです。
物損事故の特殊な損害例
- 休車損害:営業用車両が事故にあって被った利益の減少
休業補償は物損事故では認められませんが、事故車が仕事に不可欠で代わりの車(レンタカー、代用可能車、遊休車など)がなく、やむなく損害が生じた場合、修理や買い替えができるまでの期間、「休車損害」として賠償を受けられることがあります。
- 評価損:事故にあって下がった車両の価値
新車や人気車種、高級車などで、車のフレームに損傷がある場合には認められる傾向にあります。修理費用の1~4割になるケースが多いです。
注意点①自賠責保険での物の修理代は補償NG
自賠責保険・自賠責共済は「人身損害に対する補償」なので、物的損害である修理費用については、自賠責保険・自賠責共済で補償されません。
加害者本人、相手方の任意加入対物賠償保険、またはご自身加入の車両保険などで対応してもらう必要があります。
注意点②物損事故、慰謝料は原則ないが例外も | 車が民家に飛び込む | 愛犬の死亡
「迷惑料」という名目での損害賠償請求は法的に認められません。慰謝料(精神的苦痛に対する賠償)も、物損事故では原則、認められません。
ケガ人のいない物損事故では「精神的平穏などを強く害される特段の事情が無い限り認められない」とされています。
ケガ人がいないのに慰謝料を認めた裁判例としては、車が民家に飛び込んだ事故、愛犬の亡くなった事故などの事例があります。
注意点③ 物損事故から人身事故への切り替えは速やかに
物損事故から人身扱いに切り替えたい当事者もいます。
「事故当日には痛みを感じておらず、警察には物件事故として処理してもらったが、翌日朝から激しい痛みが生じていた」などというケースです。
診断書を警察に出すなどしてケガが分かると、人身事故として扱われます。できるだけ速やかに対応しましょう。
数週間たってから診断書を出しても、認められないケースがあります。
自動車安全運転センターが発行する「交通事故証明書」上では「物件事故」扱いのまま、保険会社からケガの対応をしてもらえる場合もあります。
「ケガが軽微」だった場合、「公道以外の場所での事故」だった場合など、人身事故扱いにできなかった一定の事情があるケースです。
※本記事は、公開日時点の法律や情報をもとに執筆しております。