公開日:2021.03.11 最終更新日:2021.10.29
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管財事件のデメリットとは?|破産管財人・債権者集会とは|弁護士が解説

【本記事の監修】 福岡の弁護士 弁護士法人桑原法律事務所 弁護士 桑原貴洋 (代表/福岡オフィス所長)
- 保有資格: 弁護士・MBA(経営学修士)・税理士・家族信託専門士
- 略歴: 1998年弁護士登録。福岡県弁護士会所属。
日本弁護士連合会 理事、九州弁護士会連合会 理事、佐賀県弁護士会 会長などを歴任。
目次CONTENTS
この記事では、管財事件や破産管財人、管財事件となった場合のデメリットなどについて、弁護士が解説いたします。
管財事件とは?
管財事件とは、裁判所より破産管財人が選任され、財産の換価、調査等がされる破産手続きの類型です。
破産管財人とは?
破産管財人とは、自己破産申立てがあった際に、裁判所が職権で選任する弁護士です。破産管財人は、破産事件に関して多くの経験を有する弁護士の中から選任され、申立人の方で選ぶことはできません。
破産管財人の業務とは?
破産管財人の主な業務は、破産者の財産調査、換価作業をはじめ、債権額の確定、債権者への配当、免責を許すか否かの意見陳述など、多岐にわたります。
このように、破産管財人は、破産手続において広大な権限を有しており、破産者は破産管財人の調査に協力する義務があります。したがって、破産管財人が選任される管財事件(破産管財人が選任されない同時廃止事件についてはこちら)では、破産管財人の指示をしっかり守り、必要な協力を尽くさなければなりません。
この義務に反した場合には、免責不許可事由となり、借金の返済義務が消滅しなくなってしまうという不利益が生じるおそれがありますので、十分に気をつける必要があります。
どのような場合に管財事件になるの?
破産手続きにおいて、管財事件と同時廃止事件はどのように振り分けられるのでしょうか。管財事件と同時廃止事件との振り分けは、以下の基準で行われています。
管財事件となる判断基準
破産法では、「裁判所は、破産財団をもって破産手続の費用を支弁するのに不足すると認めるときは、破産手続開始の決定と同時に、破産手続廃止の決定をしなければならない。」と規定しています(破産法216条1項)。つまり、「破産財団をもって破産手続の費用を支弁するのに不足すると認めるとき」以外は、管財事件となります。
破産財団とは、破産者の財産(または相続財産もしくは信託財産)であり、破産手続において、破産管財人によって管理・処分されるべき財産のことをいいます(破産法2条14号)。
福岡県での運用
もっとも、上記の基準だけでは曖昧ですので、福岡県では下記のような取り決めをもとに、実務上の運用がなされています。簡単にいうと、福岡県では、以下のような場合には管財事件となる可能性が高いということになります。
- 一定以上の財産がある場合
- 借金の経緯等が不明確で、管財人による調査が必要とされる場合
破産レターより引用
第1 財産の価額による判断
1 破産手続開始決定時において、債務者が有する次の(1)から(7)までの財産の項目ごとの合計額のいずれかが20万円以上である場合は、管財事件とする。
(1)預貯金及び代理人弁護士への預け金
(2)保険契約解約返戻金
(3)居住用家屋以外の敷金等返還請求権
(4)退職金債権の8分の1
(5)自動車
(6)家財道具その他の動産
(7)債権、有価証券その他の財産権
2 現金、預貯金及び代理人弁護士への預け金については、その合計額が一定額を超える場合には、管財事件とする。
上記の一定額は、標準的な世帯の1か月の必要生計費(33万円)を参考とする。
第2 事件の類型による判断
次の1から5までに該当する場合には、破産手続開始申立ての段階で「破産財団をもって破産手続の費用を支弁するのに不足する」と認めることが類型的に困難であることなどから、管財事件とする。
ただし、破産管財人による調査・換価を要しないことが破産手続開始申立て段階の資料のみから明らかである場合は、この限りでない。
1 法人代表者及び個人事業者型
債務者が法人代表者の地位にあり、若しくは過去にその地位にあった場合、又は現に個人事業を営んでおり、若しくは過去に営んでいた場合
2 不動産型
破産財団に不動産がある場合
3 資産調査型
債務者の資産状況(資産の存否や価額及びその取得や処分の経緯等)や負債増大の経緯等が明らかでない場合
4 否認対象行為調査型
否認権の行使の対象となる行為が存在する可能性がある場合
5 免責調査型
免責の許否を判断するのに、管財人による免責不許可事由の有無又は裁量免責の可否についての調査を要する場合
「破産レター」より引用
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管財事件のデメリットとは?
デメリット1 期間が長い
管財事件は、同時廃止事件と比べると複雑な手続なので、破産申立てから破産事件終結(免責許可決定)まで、数か月~1年程度(事案によってはさらに長期になることもあります)の期間を要することがあります。
同時廃止の場合、多くは2~3ヶ月で手続が完了することに比べると、このデメリットは小さくないものと思われます。
デメリット2 お金がかかる
管財事件の場合、破産管財人が選任されるため、破産管財人の報酬を裁判所に納める必要があります(これを「予納金」といいます)。かかる予納金は、少なくとも20万円以上になるため、決して少ない出費ではありません。
管財事件では裁判所に行く必要はある?
管財事件と同時廃止の相違点は、債権者集会への出席の要否という点です。
破産管財事件の場合、債権者集会が定期的に開催されますので、その都度裁判所に出席していただく必要があります。一方、同時廃止の場合は、債権者集会が開催されませんので、債務者の方は、債権者集会に出席するために裁判所に行く必要はありません。
関連記事:破産の同時廃止事件についてはこちら
管財事件の債権者集会の開催頻度は?
債権者集会の開催の頻度は、概ね3か月に1回程度です。これが破産手続きが終了するまで続くこととなりますので、すぐに破産手続きが終了するようなケースにおいては1回の出席で済むこともありますが、長期化するようなケースにおいては数回の出席を要することもあります。
債権者集会ではどんなことをする?
一概にお答えはできませんが、破産の開始決定とともに定められる財産状況報告集会においては、破産管財人が破産手続開始に至った事情や、破産者及び破産財団に関する経過および現状などを報告したりします。
それ以外にも、債権者の質問に対する質疑応答がされたりすることもあります。
ただ実際には、債権者集会は形骸化しており、多くの債権者集会では債権者が1人も来ていないことも珍しくありません。ほんの数分で終了することも多いです。
破産手続きや借金問題のご相談は弁護士法人桑原法律事務所へ
破産手続きにおいて、管財事件となるか同時廃止事件になるかは、破産者にとっては非常に重大な問題です。
また、管財事件になるかどうかの基準はわかりにくいため、正確に理解することは困難でしょう。速やかな破産手続きを実現するためにも、専門家である弁護士に依頼されることをおすすめいたします。
※本記事は、公開日時点の法律や情報をもとに執筆しております。

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