公開日:2020.04.07
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新型コロナウイルスの影響で経営悪化|整理解雇・給与カット・採用内定取消しは可能?
【本記事の監修】 福岡の弁護士 弁護士法人桑原法律事務所 弁護士 桑原貴洋 (代表/福岡オフィス所長)
- 保有資格: 弁護士・MBA(経営学修士)・税理士・家族信託専門士
- 略歴: 1998年弁護士登録。福岡県弁護士会所属。
日本弁護士連合会 理事、九州弁護士会連合会 理事、佐賀県弁護士会 会長などを歴任。
目次CONTENTS
Q.新型コロナウイルスの影響による経営悪化を理由として、従業員を整理解雇することは可能でしょうか。
A. 整理解雇については、一定の要件を充たした場合のみ可能となります。
判例上、整理解雇を行うためには、
- 人員削減の必要性
- 解雇の必要性
- 人選の合理性
- 解雇に至る手続が労使間の信義則に反しないこと
という4要件を充足することが必要とされています。
1.人員削減の必要性や2.解雇の必要性については、外出自粛などに伴う急激な売り上げ減少により財務状況が危機的となり、経営上真摯な努力を尽くしても解雇を回避できないような場合には、認められる可能性があります。
3.人選の合理性については、経営状況に照らして相当な余剰人員を定めたうえ、合理的な基準に基づき解雇する者を決定する必要があります。
4.解雇に至る手続としては、労働者に対して誠意をもって説明する機会などが必要とされています。
以上のように、整理解雇は、一定の条件を充たした場合にのみ可能となります。
Q.新型コロナウイルスの影響による経営悪化を理由として、従業員の給与をカットすることは可能でしょうか。
A. 雇用契約で合意した給与を直ちにカットすることはできませんが、就業規則の変更によりカットすることができる場合もあります。
雇用契約に基づき、使用者側には契約した給与の支払義務が生じており、財務状況の悪化によりただちにこの義務を免れるものではありません。ただし、一定の要件を充足する場合には、合理的と認められる限り、就業規則の変更により給与等の労働条件を変更することができます。
ただし、労働者と使用者が就業規則と異なる合意をしていた部分については、その合意が優先され、就業規則の変更によっても変更することはできません。
Q.新型コロナウイルスの影響で経営が悪化し、入社予定の採用内定者について、採用内定を取り消すことは可能でしょうか。
A. 採用内定とは、法的性質上、始期付解約権留保付労働契約が成立している状態をいいます。
つまり、解約権が留保されているとはいえ、労働契約が成立していますので、採用内定の取消し(留保解約権の行使)は、解約権留保の趣旨、目的に照らして客観的に合理的と認められ社会通念上相当として是認することができるものに限って認められます。
そして、企業が経営の悪化等を理由に採用内定の取消し(留保解約権の行使)をする場合には、いわゆる整理解雇の有効性の判断に関する4要素(①人員削減の必要性、②解雇回避努力義務、③人選の合理性、④手続の合理性)を総合考慮したうえ、その客観的合理性、社会通念上の相当性を判断する必要があります。
したがって、内定取り消しをする際には、上記のような様々な事情を考慮する必要があり、場合によっては補償や職種変更を含めた代替案を検討すべきケースも想定されますので、内定取り消しを通知する前に、弁護士等の専門家へ相談をした方が良いでしょう。
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